「多年草の増やし方」株分けとさし木

「フローラルガーデンの庭仕事」H29年1月20日の内容です。次回は2月17日「夏に活躍する植物」夏咲きの一年草と多年草。
■ フローラルガーデンの庭仕事講座/毎月第3金曜日 10:00〜11:30
イギリスのガーデン本を読み解きながら庭目線の園芸基礎知識を学ぶ勉強会。
園芸と庭づくりの基礎を学ぶとともにフローラルガーデンの植物について説明します。
〈講師〉 ケイズガーデン 近藤かおり(フローラルガーデンよさみチーフガーデナー) 
〈定員〉70名 〈参加費〉 無料
*お申込みはフローラルガーデン事務局0566-29-4330またはinfo@garden-yosami.jpまで


イングリッシュガーデンのピオニー

「多年草の増やし方」株分けとさし木

What is propagating plants ? 〜 「植物を増殖すること」とは? 〜
多くのバラエティに富んだ植物のグループを増殖することは、健康で丈夫な植物の存在を保ち、短命の多年草を衰える前に戻すことができ、装飾に使える植物をストックすることが可能になるということ。種まき、さし木、株分けなど、その植物に合った方法で増殖することはガーデナーにとって必要不可欠なスキルです。
by Alan Toogood

1、 多年草の株分け
宿根性の多年草(宿根草)を成長させる一番の方法が株分けです。年数の経った特別な植物や貴重な植物を増やすことで使える植物を増やすことができます。多くの宿根草は2〜4年毎に株分けすることで株を健康に保ち丈夫にします。
多くの植物は秋か冬または早春の休眠期に株分けは行います。多くの植物は暑く乾きやすい真夏と凍る真冬以外は株分け可能です。初夏に株分けすると良い植物もあります。プルモナリアやアイリスは新しい根が成長する時期に行うことで株分けによる傷が早く回復しダメージを受けるのを避けられます。株分けした植物は日陰に置いて養生しましょう。どのシーズンに株分けをしたとしても葉を落とすことと湿気を保ち回復するまで守ってあげることで成功させることは可能です。
株分けをするために掘り上げた時が土を再生させる良いチャンスです。新しい堆肥をすきこみ有機質を足しましょう。

【株分け時期別特徴】
① 晩秋から早春の休眠期
〔代表的な植物〕キク、アスター
〔株分けのタイミング〕毎年または1年おき
〔特徴〕晩夏に咲く。細かい根が多い植物

② 初夏の新しい根が成長する時期
〔代表的な植物〕プルモナリア、ジャーマンアイリス
〔株分けのタイミング〕3年に1度
〔特徴〕毎年新しく球根や株が増える

③ 晩夏〜初秋(花芽形成後)
〔代表的な植物〕ヘレボラス(クリスマスローズ)、ピオニー(芍薬)
〔株分けのタイミング〕2〜4年に1度
〔特徴〕夏の半ばには花芽形成

2、さし穂はどうやって根を出す?

① 根が出る場所
成長する部分を含むさし穂は切られた細胞から新しい根を出す能力があります。植物の茎や葉、根に含まれる成長する部分は活発な分裂細胞(形成層)を持っていて、ちょうど表皮の裏あたり、茎が厚くなっている部分が新しい根が出やすい場所になります。特に節の近くや芽の成長点、根の先端などには活発な分裂細胞が多く集まっています。

② 根と茎と葉の違い
根と茎は異なるタイプのさし穂として成長します。茎で作るさし穂は茎から直接根が出ているように見えますが、実は多くの場合切り口を覆ったカルスから出ています。カルスは細胞を守る塊で、傷つけられると反応し形成されます。新しい根は茎から直接、またはカルス自身から出ています。
根挿しは根と茎、両方の成長する部分が含まれていることが必要です。葉挿しの場合、葉脈の近くから根を出します。

③ 植物の増殖能力
植物の細胞には生長するための重要な遺伝子が含まれていて植物はどの部分から分かれてもオリジナルのように生長します。枝は切られることで成長ホルモンが動きだし、芽や根が成長し始めます。

3、さし木のタイミング

どのタイプのさし穂も植物の成長サイクルに合わせることが成功するためには重要なポイントです。健康で活力のある枝を選びましょう。根が出るかどうかはそのコンディションが大きな影響を与えます。すべての宿根草が株分けに向くわけではありません。正しい方法を見極めることがガーデナーとしてのスキルアップにつながります。カレンダーに記録し、ガイドを作ることをお勧めします。

4、さし穂の作り方と管理方法
茎の太さ、節の付き方などにも寄りますが、目安として多年草は5cm前後(シュラブは10cm前後)になるようにします。クレマチスなど節と節の距離が長い場合1節でさし穂を作り、地際の位置に節が来るように挿します。乳液が出る植物は切り口には灰をつけて。落葉樹はビニールやペットボトルで覆って湿気が保てるようにすると根が出やすいでしょう。常緑樹は風通しが悪く湿気がたまるのを嫌うので何も覆わず日陰で管理します。

〈さし穂作りの注意点〉
◎ さし穂の中に2節以上含めるように5〜10cmで切る(節が地上と地下にあるようにする)
◎ 一番上の一対の葉を残し下の葉は落とす(葉が細い場合は上半分程度の葉)
◎ 葉は付け根の芽を痛めないようにハサミで切り落とす(手で取ると芽も取ってしまうため)
◎ 水分蒸散を調整するため葉の先端を半分程度にカットする(葉が大きかったり分量が多すぎる場合)
◎ 水の下がりやすい先端や花は取り除く(脇芽は出来るだけそのまま)
◎ 茎の上下は節から5mm程度離れたところを切る(下はで斜めにカット)
◎ 切り口が乾かないようにすぐ水につけ十分水あげをする(1時間程度)

5、さし穂の種類別特徴

①ソフトウッドカッティング(シュートが出る時期の硬くなっていない新芽)
〔さし木時期〕春から初夏(植物によって向く時期が異なるが新芽が出ていれば年間通してOK)
〔根が出るまで〕2〜3週間
〔代表的な植物〕アジュガ、カンパニュラ、ユーフォルビア、モナルダ、ペンステモン、ペルシカリア、フロックス(ロックガーデンタイプ)、ルドベキア、セダム、ベロニカ、シスタス、テウクリューム

② セミハードウッドカッティング(色が濃くなり、硬くなり始めたシュート)
〔さし木時期〕秋〜早春(落葉樹は葉が落ちた後、芽が動き始める早春まで)
〔根が出るまで〕半年以上
〔代表的な植物〕落葉樹の多く、常緑樹の多く、半耐寒性多年草の多く、コニファー、ラベンダー、イベリス、ペンステモン、ベロニカ、シスタス、バラ、サルビア、テウクリューム、クレマチス

③ ハードウッドカッティング(熟して硬くなったシュート)*その年に成長したものに限る
〔さし木時期〕初夏〜盛夏(落葉樹は葉が付いている間、常緑樹は成育期)
〔根が出るまで〕半年以上(初秋に挿して晩春に出来上がる)
〔代表的な植物〕落葉樹の多く、常緑樹の多く、ラベンダー、バラ、エルダー

④ ルートカッティング
〔さし木時期〕晩秋〜早春(デリケートな植物は早春)
〔根が出るまで〕3〜6か月
〔代表的な植物〕アカンサスモリス、アンチューサ、アネモネ、エキナセア、フロックス、バーバスカム

〈参考文献〉
The Royal Horticultural Society PROPAGATING PLANTS / Alan Toogood
SUCCESS WITH CUTTINGS / Chris & Valerie Wheeler


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